「松岡さん………」


佐久良くんが手を引っ込める。


「………ご、ごめんなさい………ごめんなさい、佐久良くん………」


謝るしかできない私の目を涙がぼろぼろと流れていく。

佐久良くんはそんな私の涙にふれようとして、思いとどまるように手を止めた。

そしてゆっくりとうなずいて、笑う。

それは、とてもきれいで、満足そうな笑顔だった。


「………松岡さん、約束、守れなくてごめんね」

「……さ、佐久良くん………」

「……でも、ありがとう………。一緒に来ないことを……選んでくれて」

「……佐久良く……!」


佐久良くん身体が強く光る。

あまりのまばゆさに一瞬目を閉じてしまった。

そして次に目を開けた瞬間、佐久良くんはもうどこにもいなくて。

私の周りは、暗くて、深い海の中へと変わってしまう。


「………っ!」


あっという間に息ができなくなり、苦しさで動けなくなる。

意識がだんだんと遠くなり、頭がぼんやりとする。

その苦しさと頭にもやがかかるような感覚に、ハッキリと死の気配を感じ、恐怖に涙がせりあがった。


……こわい。

私、死ぬのがこわい。

いやだ。こわい。

死ぬのはこわい。

死にたくない………!