「………お父さん……あずささん………」
真っ白い頭の中。
お父さんたちの声で、姿で、いっぱいになっていく。
それと同時に、今までの様々な思い出が巡っていった。
お父さんと手をつないで歩いた道。
毎日のように2人でお母さんのお見舞いに行ったこと。
帰り道、寂しくて泣く私を、お父さんは優しく手を引いてくれた。
お母さんが死んでから、お父さんは出来る限り私のそばにいてくれた。
仕事がいそがしかったのに、学校行事は絶対に来てくれた。
運動会では私より必死に走っていて。
参観日では他の子はお母さんが見に来る中、お父さんの姿は珍しくて
恥ずかしかったけれど、どこか嬉しそうなお父さんを見ると、私も嬉しくなった。
『……麻衣子。なにか困ったことはないか?友達とはうまくやっているか?学校は楽しいか?』
不器用なお父さんの、いつも直球な問いかけ。
『いつも家事をやってもらってごめんな。お前ももっと遊びたいよな。他の子みたいに、自由な時間がもっとほしいよな』
そう言っていたお父さん。
お父さんはいつもそう。
仕事が忙しくても、いつも私のことを考えてくれた。
不器用で、それは必ずしも私の望みと合っていないこともあったけれど。
それでも、お父さんなりに考えてくれていた。
なのに、私は…………



