(……なんで)


なんで、よ。

あずささん、なんで。

私のことなんて放っておけばいいのに。

私はあずささんに一度も優しくなったことも、いい子でいたこともなかったのに。

そんな私をまだ娘だなんて言って。

馬鹿みたい。

そんなにお父さんに良く思われたいの。

得点稼ぎをしたいの。

どうせ、そのためなんでしょう。


………なんて。


(………馬鹿は、私だ)


「………あずささん、ごめんなさい」


本当はわかっていた。

あずささんが精一杯私と仲良くしようとしてくれたこと。

そのとき、きっと。

あずささんもすごく不安で怖かったこと。

私が怖かったように、あずささんも怖かっただろう。

それでも、私とわかり合おうとしてくれた。

突っぱねて逃げた私と違って。

あずささんは私を愛そうと向き合ってくれていたんだ。


いま、このときも。




「………麻衣子………麻衣子………!
どこだ!麻衣子、麻衣子!返事してくれ!頼む、返事してくれ!無事で………無事でいてくれ………!」

「麻衣ちゃん!麻衣ちゃーん!」


お父さんとあずささんの声がする。

必死に私を呼んでいる。

無事でいてくれと。

生きていてくれと呼んでいる。