死とは、何だろう





1人の少女は注文したアイスティーが来るまでの間



窓の外を見ながら考えていた



彼女は白いカッターシャツを腕まくりし、黒のプリーツスカートを身にまとい



黒タイツと黒のローファーを履いていた



カッターシャツの胸ポケットには烏猫(頭から爪までが真っ黒の猫)の紋章が入っている



そして真っ赤なリボンタイ



それは名門校、夜明学園高等部の制服だった



店員や客もチラリと彼女の方を見る



それ程までに夜明学園は有名なのである





「お、お待たせしました…ご注文のアイスティーでございます」


「ありがとうございます」





少女は艶やかな長い黒髪を、少し邪魔そうに耳にかけてアイスティーを受け取る



フレームオフのメガネの奥にある闇色の瞳は、今にも吸い込まれそうだ




そして陶器のように白い肌



柔らかそうな唇



薔薇色の頬



豊満な胸



何処を見ても美少女と言うべきルックスの彼女に、アイスティーを持ってきた男店員はホゥ…と息をもらす



店の裏へ戻る際もチラリと彼女を見る男店員



ストローでアイスティーを飲む彼女は近くで見るのとは違い、どこか幼そうで



まるで人形のように愛らしかった





「さ、380円になります」


「貴方は死は何だと思われますか?」





会計の時、彼女は唐突に口にした



あまりに唐突で、レジを担当した先ほどの男店員は「は?」と素っ頓狂な声を上げる



だが、少しだけ考えてから彼女の質問に答えた





「命の、喪失…って言えばいいのかな?

でも、死んでもイヤだとか言うから、気持ちとか恨みはこの世に残る」


「そうですか、参考になりました。ありがとうございます

あ、アイスティー美味しかったです。ごちそうさまでした」


「あ、はい…ありがとうございます」





彼女は笑って男店員に礼を言った



そして380円ぴったり置いて店を出て行く



その後ろ姿を見送る男店員



 

「…変わった子だなぁ…」