傍にいてギュッとして

「ねえ…」

Nってなんなの?

……言葉にならない。できない。

やっとの思いで呼吸をする。心臓を落ち着けようと胸を掴む。

「…大丈夫?」

意外なことに、男が言った。
私は首を横にふった。

大丈夫なわけないじゃん…

「お前、どうして[ゼル]のままなんだ?」

その[ゼル]っていうのはなんなの?

私、知らないことだらけ…

「[ゼロ]になろうともしない…」
「ぇ…?」

男はふぅってため息を一つ。

「ま、[ゼル]も[ゼロ]もじきに分かるさ。なんてったって、お前は月をみちまったんだからなぁ?」

憎ったらしい笑い声が、満月に吸い込まれる…