ごめん?私、謝って欲しいわけじゃないんだよ。ただ、これが、夢としか思えなくて…

「おにい、ちゃん。ほんとうに、お兄ちゃん?」
「夜のお日様 紅く揺れ
ゆかたの女子がするすると
さすれば月が黄金色

そのとき扉が開かれて
バケモノ様が現れる
世の中リンリン
バケモノ様が鐘鳴らす」


目の前の男は、懐かしいうたを歌った。私と、お兄ちゃんしか知らない歌。小さいとき、クラスの子に聞いたけど、だれも知らなかったうた…

「満月の夜、絶対に一人で空を見てはいけないよ」

そう言って、笑った。なぜだろう?目の前の、死んだはずのお兄ちゃんは、ほんとうに生きていて、私の勘違いだったみたいに思える。

「私、あなたのこと信じてみる。お兄ちゃん…」
「ありがとう。帆波」

そう言って、お兄ちゃんは私の頭を撫でた。