愛されたい、だけなのに




「失礼します。校長、柳です」

柳先生が校長室のドアを開けた。


ドクン、ドクン。


緊張からなのか、息が苦しくなってきた。


「…櫻井、大丈夫か?」

隣にいた榊原が小さな声で耳打ちしてきた。

「…うん」

その問いに、小さく頷いて答えた。



大丈夫、大丈夫…と心に言い聞かせながら、柳先生の後に付いて校長室へと入室した。





校長室には、椅子に座っている校長先生とその隣に立つ北川先生がいた。


「校長、連れてきました。僕の隣から…蘭と榊原、そして櫻井です」


「!」

柳先生が私の名前を言った後、すぐに校長先生と目が合った。


ドクン、ドクン。


「そうですか…君が、櫻井さん」


校長先生にじっと見られる。


「…っ」


やっぱ、ここに呼ばれたのって私のことー…


「校長先生!先に言っとくけど、圭吾を辞めさせてマナを退学にするなら私も辞めるからね!」

「!」

そう校長に向かって大きな声で言ったのは、蘭。

「おい…蘭!」

「俺も。別に、教師と生徒が一緒に暮らしてたっていいじゃねぇか。櫻井の親には了解得てるんだし」

「榊原まで!お前ら、さっき大人しくしてろって言ったばっかりー…」


「だって!…学校がなくなったら、マナの居場所がなくなっちゃうかもしれないんだよ?昨日みたいに、マナがいなくなるのは私はイヤだ」



蘭の横顔しか見えないが、声が震えているのはわかった。



「…っ」


蘭の言葉が嬉しくて、涙が出そうになる。