愛されたい、だけなのに




リビングのソファに座ると、柳先生が紅茶を入れてくれた。


その紅茶を手渡してくれると、柳先生はダイニングテーブルに座った。


「で、榊原はどうだった?」

「え…あ、準優勝でした」

「そっか、良かったな。アイツ、水泳だけはずば抜けてスゴイらしいからな。勉強も、もう少し頑張ってくれればいいんだけど」


笑みを含めて話す柳先生は、学校での表情と同じ顔を見せた。

「…」

ここに来てから、こうしてリビングで柳先生と一緒にお茶を飲んだりするのは、初めてかもしれない。

朝出て行く時間も違うし、帰ってくる時間も違うから食事もあまり一緒に食べたことがない。



ホントに私は、ただの同居人。


「どうした?」

「!」

さっきまでダイニングテーブルにいた柳先生が、いつの間にか隣に座っていた。


「榊原と何かあったか?」

「…いえ、何も」

ビックリしたー…


「なら、いいけど。この間のこともあるし、そのことも心配してたんだ。何もないなら良かったよ」


ぽんぽんっと、頭を撫でながら柳先生が言った。



ズキ。





その優しさが、なんか胸に突き刺さった。