結局悠真に謝ることもできないまま、やってきた夏祭り。


萌と幸大が一緒に行こうと誘ってくれたけど、それは断った。


どうしても、一人で行ってしたいことがあったから……


悠真に八つ当たりした自分へのけじめのつもり。


寂しいけど、行くしかない……よしっ。


あたしはぐっと両手を握りしめると、部屋を出た。


「お母さん、あたし、ちょっと出かけてくるね」


リビングにいたお母さんに声をかけると、そこには鈴もいた。


かわいいピンク色の、たしかあたしと色違いで買った浴衣を着て。


髪をお団子にまとめた鈴は、本当にかわいかった。


「あら?柚も夏祭り行くの?」


お母さんの言葉にうなずいて、鈴の方へ顔を向ける。


「鈴、かわいいね」


「お姉ちゃんありがとっ!」


鈴はえへへっと笑うと、あたしの耳元にそっと口を寄せて


「男の子と行くの初めてだから、緊張しちゃうなっ」


あたしにだけ聞こえるようにそう言った。


「お母さーんっ、そろそろ行ってくるねっ」


「いってらっしゃーい」


お母さんのとなりで、どこかいつもと雰囲気の違う鈴の背中を見送った。