まだ他の人が来る気配のない教室にいるあたしたち。


先に口を開いたのは、やっぱり悠真のほうで。


「あー…」


何か、言いにくいことなのかな?


悠真は何か言いたげに、頭の後ろをかきながら視線をこちらに向けている。


「うん?」


そう言って先を促すと、悠真は少し考える風にしてからくしゃりとした笑みを浮かべた。


突然のことにびっくりする。


それと同時に、胸がドキッと音を立てた。


「な、なに…?」


お願いだから…心臓、鳴りやんで…っ。


きゅうっと制服の胸元をつかむ。


すると悠真は言いにくそうに口を開いた。


「忘れた…」

「へっ?」

「宿題、やんの」

「はっ!?」

「今日の分、見せてくんねぇ?」


はぁ…なんだそんなことか。


バカだなぁなんて言いながらノートを手渡す私の顔は、明るくて。


でもそれが悠真のおかげだってことに、気づけていないあたしは…


きっと、もっと、バカだ…