「なんでお母さんがありがとうなの?普通言うのはあたしのほうなのに!」


なんだか照れ臭くなってきて、そっとスプーンを置く。


「お母さんね、柚のその笑顔がすごくうれしいのよ。作り甲斐があるわ」


っ…!


「そ、そうかな?」


口許が小さく震える。


「えぇ、もちろんよ!また作るからね」

「…うん。ありがとう」


お母さんが掃除をするとか言ってダイニングを出ていくのを確認すると、そっと口許を緩めた。


…うれしかった。


お母さんが言ってくれたことが。


あたしもお母さんに、小さなことだけど何かできていたんだなって。


ちょっとでも、必要とされてたんだなって。それがうれしくって。


再びスプーンを動かすけれど、口に運んだオムライスはさっきよりも幸せな味がした。