江戸の虎が溺愛する者





「おい、雪ちゃんの近くにいる男って江戸の虎か?」「ああ…俺たちの夢が、希望が虎に食べられてく…」「おいら達の雪ちゃんとどういう関係なんだっ!?」





…奥の方から男の闇が見え聞こえしてくるがな





このまま雪に関わっていると殺され流んじゃないか、俺





「…。」





…ん?何ださっきまで可愛い顔して笑ってたのに





あの男達の声が聞こえた瞬間から雪は下を俯き、黙ったままだ






んあ〜よくわかんねえ






俺は考えるのをやめ、お金をテーブルの上に置きその場を去ろうと立ち上がった




「じゃあな」





さて、屯所に戻りますか…




「あ、待ってください!」




雪の小さい手が、俺の袖を掴んだ




「…ん?」





「虎吉様にお願いがあります」




そう言い、俺を見上げる雪の目はガチだ




嫌な予感しかしないのはきっと先程の団子屋での出来事のせいだ、そうしとこう





掴まれた袖が強くギュッと握り締められた





…ほっとけない、んだよな






俺は軽く息を吐き、頭を掻いた







「話しは聞いてやるから、そんな怖い顔すんなって」





雪に軽くデコピンを食らわせる




雪は痛いとも言わず、触れられたおでこに手をかざす




「んっ…そんな怖い顔してました?」





「ああ、般若みたいだった」





俺と雪は顔を見合わせ、プッと笑った






…より一層、男達が俺に殺意が溢れ出たのは言うまでもない