江戸の虎が溺愛する者




抱きしめる力が強くなる





華奢な体が壊れないよう加減をした






「…坂本なんてほっといても大丈夫」






「おい。虎が人様に向かって何言ってるんだ?」






坂本が鋭い目で俺を思いっきり睨んだ







もちろん、全力スルー







「よりによって鬼の副長と一番隊隊長も一緒かよ。…平和ボケで羨ましいこった」







土方さんと沖田さんの両方を見やり溜息をつく







「これふぁしゃかほと、ひまひてるのならきられとゅけ(これは坂本、暇してるのなら斬られとけ)」








串刺し団子の最後の一本を頬張りながら立ち上がり、刀に手をかける







俺は背中に悪寒が走り、ハルを解放し慌てて刀を抜こうとする沖田さんにしがみつく








「落ち着いてください沖田さんんんんん!ここ店!店ですよ!?あんたが暴れたら1人2人死にますから!!!!」








それどころか店がぶっ壊れるわ!



……………


…………



………





ギャンギャン騒いでいるとき、解放されたハルはホッと胸をなでおろす







「すみません龍馬さん、すぐお団子用意しますね…!」







暴れている裕斗と沖田さんを見やり、首を横に振る







「いや、また今度来る。悪いな」







するとハルは一瞬で残念そうな表情を見せる








「そうですか…ごめんなさい、お待ちしております」







眉を上に釣り上げ目線を下げるハルに坂本は申し訳ない気持ちになり、頭に手を乗せ背中まである黒髪を優しく梳かす






「りょ、龍馬さん!?」






びっくりして見上げたら、すぐそこに坂本の顔があり鼻がくっつきそうな距離だった






綺麗な顔立ちで道ですれ違ったら誰もが振り向いてしまうほどの顔面偏差値の男が目と鼻先にいたら誰だって不覚にドキドキしてしまう






ハルは自分の顔がみるみる赤くなるのに気がついた