江戸の虎が溺愛する者




そう思ったのはたったの一瞬





「おーいハル、団子をく…れ…」





のれんをくぐって店の中に入ってきた茶髪を後ろでポニーテールを結んだ男






「あ、いらっしゃいませ龍馬!」






腕の中で俺の天敵の名を呼ぶハルが眩しく見える





「よお、江戸の虎じゃねーか…」






お互いの空気がピリピリと張り詰める






くっそ腹立つ…!







「こりゃ坂本、なーんでお前に会うときはいっつも公務じゃないときなのかなー?」







いつまでたってもこいつ斬れねーっ!






俺と坂本の作り笑いが段々歪み始める






険悪ムードを悟ったのか、ハルはもじもじと動く





「あの裕…虎吉?龍馬さんにお団子出さなくちゃいけないから、離して?」






グハッ!?






俺を見上げるハルの瞳は熱帯びていて、吸い込まれそうな感覚に陥る






おねだりしてくるのが何とも言えないぐらい可愛くて…






だめだ、こんなハルを坂本なんかに近付けさせたくねえ!