「新撰組だ…!」





町人達の群れの誰かがそう言った






「新撰組…?」






まって、ここは江戸だろ?京都にいるはずの新撰組がなぜ…








俺はハッとした






理科のおじいさん先生が言っていたタイムスリップのこと






時空の歪みで本来あるべきものが違う場所に移ってしまう現象







「俺、本当にタイムスリップしたのか…」





でもそんなことしたら、本来の歴史がぐちゃぐちゃになるんじゃないか?





もし、俺以外の人がタイムスリップしたとして何度も時空の歪みができて本来の歴史とは違うことになっても、俺がいた時代まで正しい歴史が伝わってきたんだ?






矛盾する疑問が俺の頭にぐるぐると回る







町人達が道を退けたら、そこに水色の羽織と鉢巻をつけた男集団がいた







俺よりイケメンが沢山いる…






新撰組と俺のファーストコンタクトが、これだ





1人のイケメンがこちらへ歩み寄ってきた




「俺は新撰組副長、土方 歳三。お前の名は?」




土方 歳三っといった人はどこかだる気で冷たい雰囲気を身体中から溢れていた




黒色にフサフサの髪の毛は風になびき、スラっとした鼻の持ち主で鋭い目はどんな猛獣でも黙らせそうだ





「…虎川 裕斗」




すると、土方さんの鋭い目付きがふっと柔らかくなった




「裕斗か…お前に襲ってきた集団は江戸の暴れん坊でな。すばしっこいものだから居場所が突き止めれなくて手を焼いていたんだ」




あ、…やっぱここ江戸なんですね




するともう1人のイケメンが土方さんの隣へ歩いてきた




土方さんより身長は低いが、爽やかオーラが醸し出されておりちょっと焦げ目のふわりとした茶髪が印象的で薄い黄緑色の男用の着物がとても似合っていた





「土方さんが慌ただしくしてたから斬り損ねたんですよー。すみませんね、迷惑かけてしまって」




「おまえが俺に向かって敵と共に切ろうとしたからだろ!?」





チッばれてたか…





と顔に書いてあるこの爽やか系イケメンの第一印象がガラリと堕ちた





悪魔だ。悪魔がそこにいる…




「はぁ…こいつは沖田 総司だ。それより、お前の剣筋は物凄く最悪だが、なかなか見込みのある奴だと思う。どうだ?新撰組に来る気はないか?…ってより、お前を保護しとかなくてはな」




え、なになになに





しかも保護ってなんだよ保護って!?





沖田さんは「僕こいつの面倒みたいですー」





と何気賛成してるし





「い、いや…結構です」





2人は首を傾げた





可愛すぎかよ!!!!!





いや、どう説明すればいいんだ…!?




「裕斗の格好は見たことないな…ここ(日ノ本)の者、でもなさそうだな」




俺のワイシャツ姿を見る土方さんは不思議そうに見つめた





あ、穴が開きそう…





沖田さんは口を開き、



「とりあえずその格好は目立つから屯所へ戻りましょーや。おいお前ら!川に落ちてる輩共を牢にぶちこんどけ!」




すると、後ろにズラーッと並んでたイケメン集団がせっせと動き始めた




沖田さんって権限あるんだな…





「ついて来い裕斗。話はそこでするぞ」




「は、はい…!」





って結局断っといてついて行くんじゃん、俺






慌てて土方さんと沖田さんのあとを追った







「ゆうと…?まさか虎川 裕斗?」




綺麗なピンク色の振袖を身にまとった女の声を、俺は気付きもしなかった