江戸の虎が溺愛する者





「ガウッガ〜」





手に持っている醤油団子の串刺しを食べようと、片方の前足を上げる






「お前は食べれねーよ」






可哀想、だけどな…何か申し訳ない






虎春は俺が言ったことを理解したのか、悲しそうな顔をする







「ここの団子は美味しいですからね〜。虎にもきっとわかるんですよ」







パクパクと食べ続ける沖田さんはハムスターを連想させる







「はぁ…っておい!虎春っおま、ちょ…っはは!くすぐったい」






虎春が俺の口の周りについた醤油団子の甘たれを舐め続ける






「…虎春、積極的ですね」





「そういうことなんですか!?え!?」





…いや、心を許してくれている証拠だと信じよう






「…っ虎春、悪かったから舐めるのやめろ」






口の周りを舐める虎春を引き剝がし、足元へ置いた






虎のくせに、大胆なやつだ


……………




「… おい?」





ぼーっと虎吉の様子を眺めていたハルは我に返り、笑顔を土方に見せた







「あ、いえ!ゆ…、虎吉があんな楽しそうな笑顔、初めて見たので」






土方は虎春と総司とはしゃいでいる虎吉の方へ目線を向けた






「元の時代では馬鹿でほとんど無表情で…確かに笑顔になることはあったけれど、あんなに生き生きと無邪気に笑う虎吉は…」






見たことがない。そう続けた






「…あいつがここ(江戸時代)に来てから、総司も俺も変わった」






醤油団子の串刺しを手に取る






「他人に興味無い総司があんなに人にじゃれるのも、俺が安心して公務に集中できるのも…あいつのおかげだ。不思議なやつだよ」