虎春と出会った日から1ヶ月が過ぎ…4月という本格的な春の風が、部屋の開いた障子から吹き抜ける
虎春は新たな環境にやっと慣れてくれたのか、部屋中をかけ走ることなく落ち着いた
そして、持ち前の人懐っこさが隊士達の癒しとなり今じゃ新撰組のアイドルだ
「まあ俺は動物に興味無いがな」
土方さんは淹れてきたお茶をズズッと飲み一息をつきながら言った
俺が虎春の世話を見ようと決心できたのは土方さんのおかげなんだがな
無意識に口の端が上にあがる
「それにしても育ちがはやいですねー」
沖田さんの言う通り、虎春はひと月で一回り大きくなった
大人の猫と同じ大きさ、と言った方がわかりやすいかもしれない
最初は虎がこんなに育つとは思ってもいなかったから本当に不安だった
この時代にインターネットも虎の飼い方が書いてある本も無いわけだから、何をして大丈夫なのかさっぱりわからないことだらけだったが、沖田さんや土方さんのおかげで何とか虎春が元気良く成長してくれた
「お二人とも、すみません迷惑かけてしまって」
元のいた時代でも動物を飼ったことの無かった俺
簡単じゃないことはわかっていたけれど…
「なーに、俺達は好きでやっているだけだ。なあ総司?」
土方さん…
出会った時もそうだったが、本当にこの人は世話好きだな…おかげで何度救われたことか
「そうですねい…とりあえず太らせれば食べれると思います」
「「食べるな!!!!」」
名前を付ける時から思ってたけど沖田さん、あんた食うことしか考えてないよね!?
虎春も本能的危機を感じたのか、慌てて俺の背後に隠れた
…そりゃあ怖いよな
沖田さんに言われたらなおさら怖いわ
「とりあえず僕はお腹空きました」
言われてみれば…
もう昼の時間帯か
でもここの時代の人達って1日2食なんだよな
「団子屋でも行くか。虎吉、お前はどうする?」
団子屋、か
実は本来の史実を知るため、毎晩ハルのもとに通っていた
その度に困らせるようなことをしては、怒られる…ようになった
それでもやはり、人を殺める手でハルに触れるのは躊躇う