「俺、こいつの面倒を見ます」
虎を飼うとか…なかなか日本の現代人でもいないぞ。どこぞの国の金持ちよ
餌は…まあ俺が食っているものでも大丈夫か?
「土方さーん、虎吉ー、馬を持ってきましたよー」
馬を取りに行ってきた沖田さんが俺と土方さんの馬を率いて戻ってきた
「おー」「ありがとうございます!」
土方さんは茶色の馬にまたがり、その後ろに沖田さんが乗る
「悪い、揺れるが耐えてくれよ?」
空いた方の片手で子虎が落ちないように固定する
そして馬を走らせ、一隻の船が浮かぶ海を後にした
………
「虎吉ぃ!そいつの名前どーするんですかい?」
あ、名前考えていなかった
林の中を少し遅めに走って屯所へ帰っている中、土方さんの背後にしがみついている沖田さんが声をかけてきた
名前なー…
「名前、何がいい?」
腕の中でうずくまる子虎に話しかけてみたが、「ガウ?」しか返答なかった
当たり前だがな…
「タイガーでよくないかタイガーで」
「土方さん、それ俺が改名する時にも言ってませんでした?」
「じゃあ…"とらんご"はどうです?」
「何ですかその"虎"と"団子"を混ぜ合わせた名前は!?」
こいつらのネーミングセンスあてになんねー!!!
「いやー見た目がもう団子みたいで美味しそうじゃないですか」
食べるの!?食べる気なの沖田さん!?
あーもう仕方ない、俺が考えるしか…
「…虎春(こはる)、そうだ虎春にしよう!」
俺を見上げる虎春は応えるように尻尾を楽しそうに振る
「虎春かー、なかなか良い名前じゃねーか」
「タイガーより百万倍マシですね」
すると土方さんは後ろに乗っている沖田さんを睨んだ
「振り落とすぞ…」
前でギャンギャン喧嘩している2人を無視して俺は虎春を見る
「ガァッ!」
「ははっ…お前、赤ん坊とは思えないぐらい元気なやつだな」
そう言っているうちに林を抜け、江戸の町が見えてきた

