江戸の虎が溺愛する者




「グハッ」





情け無い声音とともにドサッと倒れる






「虎吉ぃ、やりますね」






人を褒めている場合か!






「沖田さん、ここは俺に任せてはやくやつを…!」





百姓の男は怯えているのか、甲板の上から動けずにいた





「んじゃ、任せましたよ」






そう言うなり、軽々と敵を蹴散らし船内へと入っていった






さーってと、もうひと働きしますか






「クッソオオオオオ!」





怒声をあげながら間合い斬りしてきた浪士の一振りを刀で受け止める





ガキンッ






「次から次へと出てきやがって…っ」







何とか力ずくで弾き返し、反動でよろけた浪士を蹴り飛ばす







その直後、沖田さんが百姓を素早く捕縛(若干半殺しされている)し敵側の生き残りも降参、ようやく夜の静けさが戻ってきたのだった







……





「あとはこいつらを屯所で聞き取りだな…」





縄で縛られている浪士達を見て、土方さんは面倒くさそうに言った






まあ、百姓は半殺しされたし…治るの何週間かかるのかなあれ






本人である沖田さんは気にしている様子なく、ツラァっとしている






ほんっと、容赦ないんだから…







俺は火が燃えている所にアヘンが入っている木箱を放り投げた





木で燃えた煙がもくもくと空へ上がる






他の隊士も木箱を放り投げるのを手伝ってくれたおかげで、アヘンの入った全ての木箱を燃やし尽くした





すると土方さんが




「総司と虎吉は俺ともう一度船内を確認するぞ。残りは浪士達を連れて屯所に戻れ。今日はご苦労だった」





えー!?まだ帰れないの…?





俺は内心ショックを受け、泣きそうになる







隊士達は「はい!」と元気良く返事をし、屯所へと戻っていった