「勝手にしろ。俺達だって邪魔されたら…」
坂本は最後まで言わず、立ち去ってしまった
再び、高欄笠木に腕を置き川を眺める
「…本当は皆怖いんだろうな。この国が崩れるのが」
独り言を呟いた言葉は、川が流れる音によって消されていった
………
その夜、俺達新撰組は江戸の町から離れた港に来ていた
どうやらここで坂本が言っていた…アヘンが交易によって取引されているらしい
船を浮かばせる海は何1つ波を立てずに静けさが漂う
「虎吉ぃ、準備はいいですかい?」
沖田さんに声掛けられ、頷いた
茂みの中に隠れている俺達一番隊は真正面から突撃する…予定だ
他の隊は違う所に配置されており、敵を囲む形になっている
木製の日本船の中から木箱が運ばれて来るのが見えた
あれが…アヘンか
まだ金持ちのやつらしか手を出していないって坂本が言っていたが…こんなに沢山いるか?
かるーく30箱ぐらいあるぞ
すると、沖田さんの隣にいる土方さんが刀を抜いた
「お前ら、行くぞ!!!!」
土方さんのその一言を合図に、他の隊員達も刀を抜き茂みから一斉に飛び出す
「し、新撰組!?」
船の乗員が声をひっくり返した
「御用改めだ!!!覚悟しやがれえ!!!」
土方さんの凄まじい殺気に怯えることなく警備にあたっていた浪士達が、迎え討ってくる
「な、なぜ新撰組が…!?取引がバレていたのかっ」
裕福な百姓であろう男が、船の甲板の上で佇んでいる
こいつか…こいつらの頭は!
剣を交えていた奴を遠くにふき飛ばし、船内へと走る
「行かせねえ!」
前に立ち塞いでくるのは多数の浪士達
一体何十人雇ったんだよ…
俺は内心呆れたが、刀を構えた
刀がぶつかり合う音、怒声が混じり合う音
俺はどちらの音も嫌いだ
「…邪魔すんな、どけろ!!!」
次々と襲いかかってくる浪士達を迅速の如く、斬る
すると数本の刀が振り下ろされ、1本の刀で受け止める
くそっはやく終わらせたいのに…!
俺は無理矢理弾き返し、目に留まらぬ速さで斬りすてる
「グアッ…」
どさっと倒れていく浪士達…明らかに新撰組が有利であることが一目瞭然だった
中には斎藤さん、山崎さんが奮闘している姿が見える
俺は油断することを許されず、襲いかかってくる浪士達の相手をした
一閃を虎のように力強く、斬る
ああーもう、あと何人来るんだよ!!!
すると視界に、大人数の浪士達に囲まれている沖田さんの姿が見えた
「…っ沖田さん」
俺は全力で走り、沖田さんの周りに群がる浪士達を円を描くように大きく回り込み斬り裂いた

