江戸の虎が溺愛する者




「虎吉…です」




俺、もしかしてやばい人に声かけられた!?





うわーーーーやらかした…







「虎吉か…覚えといてやるよ。俺は高杉だ」





高杉…?どっかで聞いたことあるけど、まあ
いっか





高杉さんは目を閉じ、再び三味線を弾き始めた






今度は切ない音ではなく、三月の春に相応しくて優しい音へと変わっていた





三味線に縁がない俺でも、高杉さんの技術は高いことぐらいわかる






俺は時間を忘れ、立ち尽くした





もちろん、夢中になりすぎ帰るのが夜遅くになってしまい近藤さんや土方さんに怒られたのは言うまでもない





…………






その夜、高杉は自分の三味線の音に聞き入っていた新撰組の男を思い出していた







すると襖から、部下である平岡 純一郎が出てきた






長い髪を後ろで束ね、漆黒に近い黒の着物を着ている純一郎はその体格を活かし刀より一回り大きい太刀を使いこなす






「新撰組の虎吉ってやつ…お前は知っているか?」





すると、純一郎の目の鋭さが増した





「晋作さん、江戸の虎に会ったんですか?虎吉は沖田 総司と同等…もしくはそれ以上に手強い相手です」





「ほう…そうか」





高杉は夜空に輝く数千個の星を見上げた





「次に会うのが楽しみだな…虎吉」





その場にいない者の名を呟き、障子を閉めた