江戸の虎が溺愛する者





すると近藤さんは俺を直視した




「虎吉、斬れるか?」





え?





いきなり話を振られてビックリした俺は動揺を隠せなかった




斬れるか…って







昨日の浪士達との出来事を思い出した



ばれていたか…



どこか命を奪うことに抵抗があり、できるだけ急所を避けて斬った自分を思い出した






刀を持ってブラブラしている物騒な世の中は、現代っ子である俺からしたら危ない事なんて百も承知だ






この前、タイムスリップした日…とは違う状況だったから







「虎吉…」





土方さんは俺の事を心配してくれたのか、肩に手を置いた




「お前さんの初公務は素晴らしいものだった。だが、敵に手加減して適当に斬っていたら…足をすくわれるぞ」





わかってるよ、そんなの!






中途半端だと、殺されるってことぐらい






俺の覚悟ってこんなもんだったけ…?





ふと視界に入ったのは、店主から貰った羽織の袖





余所者の俺にわざわざ袴を貰いに行ってくれた沖田さんの優しさ…





そうだ、俺は何のためにあの日…沖田さんを守るために盗賊を斬った?





"守るため"だったじゃないか





俺は羽織の袖をギュッと握りしめた