江戸の虎が溺愛する者





翌朝、朝礼が終わって隊士達が朝稽古に向かう中、俺は近藤さんにここに残るよう言われた




そこには近藤さんや土方さん、沖田さん、山崎さん、そして斎藤一(三番隊隊長で紫色の着物が印象的な人だが、普段はあまり姿を見かけない)
が畳みの中心に立ち尽くしていた





「…江戸に攘夷志士らしき人物がいたという噂が耳に入った」




すると全員、口を開いた近藤さんに目線を向けた




攘夷志士と言ったら…新撰組の敵、か




「わざわざ僕達に喰われに来たんですかい?感心ですね」





沖田さんは楽しそうに笑った





「わざわざ危険を冒してまで江戸に来たんだ。目的は攘夷運動ではないだろうが…」





考え込むように土方さんは言う




そもそも、攘夷志士って誰いたっけな…





この空気でさすがにそれは聞けねえ





俺はその場で取り残されている感覚に陥った





例えるなら…学校の教室で




「おい昨日の○○見たー?面白かったよな!」




「み、見た見たー!(やべえ見てねーとか言えね…ノリで合わせちまったよ…)」



その内容を知っている者同士で語り合い始め、知らねー奴らはそこで頷くぐらいの相づちしか出来ず、話に溶け込めずに孤立するっていうあの寂しい感覚!




今まさにそんな感じ。溶け込めずにいるよ、俺!