すっかり忘れていた。と言った方が正しいかもしれない




成り行きでこの時代を生き抜く覚悟を決めてしまったため、現代へ帰る事なんて考えてもいなかった





そんな俺の様子を悟ったのか、なぜか沖田さんは"安心したかのような表情"をしていた





え、怒らないの?俺てっきり罵られるかと思ってた




何があったのか知らんが、とりあえず安心した





「….ずっとここにいてくださいよ、虎吉」





「え?」




ガヤガヤと賑わう人達の声で沖田さんの声がハッキリと聞こえなかった





今、なんて…?




すると沖田さんは誤魔化すかのように俺の髪の毛を引っ張った






「いっいでででで!おおおお沖田さん何なんですかいきなり!!!」






「いや〜そこに雑草が生えていたんで、抜いてやろうかと…」






「頭に生えてるわけないでしょーが!いててててて禿げる、禿げるぅぅぅぅぅううう」





そんなに俺の髪の毛が好きか!愛されてる気はしないけどな!





やっと解放された髪の毛を、撫でてあげた





可哀想に…可哀想に…





「てか、真剣に見廻りしましょーよ…」





一応仕事だし、一通りやっとかないと





「大丈夫ですよ。江戸の町はあまり騒ぎが…」





「キャーッ!」




沖田さんが言い終わる前に、遠くから女の人の悲鳴が聞こえた




「…………。」「…………。」




「お腹空いたから団子でも食べましょうか」




沖田さんは悲鳴が聞こえた逆方向へと歩き出した



「こらこらこらこら面倒くさいとか思わないでくださいよそれでも新撰組ですか」





俺はこのクソ上司の襟を掴んだ





「僕は寝ることだけが仕事ですから」




「あんたは赤ん坊か!!!いいから行きますよ」




俺は嫌がるクソ上司を引きずって悲鳴が聞こえた方向へと進んだ