江戸の虎が溺愛する者



俺はあの日を…新撰組に出会った日を思い出した



見つけて拾ってくれた。居場所をくれた。手を差し伸べてくれた。名前をくれた。剣術を教えてくれた。袴をくれた…



そして、刀を返してもらった




竹刀を握り締める力が強くなる



「俺が新撰組の新人!虎吉だからだあ!!!」




何で見失っていたんだろう、あの日の気持ちを




余所者の未来から来たというアホを言う(事実だが)馬鹿を信じてくれたあの温かさを



俺はただ、信じ貫きたかっただけじゃないか…!



一気に間合いを詰め、懐に潜った



「…っ!」



怯まない沖田さんにプロフェッショナルな実力差を感じた



振り下ろす竹刀と横に切る竹刀



相討ちか…!?



「ウォオオオオッッ!」





バシィィンッ…



日暮れの僅かな光が道場を照らし、夜へと誘った



………


「なるほどね、タイムスリップしたことによって歴史の流れがおかしくなっちまったと」




結局俺は沖田さんより遅かったため、1本取られ負けてしまった



敵わない。この人にだけは



そう思ったはずなのになぜか不思議とあの焦りが無くなっていた



俺は全てを話した



タイムスリップによって歴史の流れがおかしくなったこと



ここからはもう俺の習った(覚えていないけど)史実とは違うこと


新撰組も含めて全てが本来あるべき姿とは変わってしまったこと




沖田さんは疑うことなく、俺の話しに耳を傾けてくれた