江戸の虎が溺愛する者


俺は団子屋の中へと案内され上へ登り、ハルの寝所へと邪魔をした



そして、俺がタイムスリップしてから今までのことを全てを包み隠さずに話した




「そっか…それで新撰組に?」




コクンッと頷き、言葉を続けた




「俺が今、無事でいるのはこの人達のおかげ」



「私もこの団子屋の店主に拾われて助かった…でも、おかしい事に気がついたのよ」




おかしいこと?



「私達がタイムスリップしたここ、幕末は幕末じゃないの」




え、どういうこと…



「ここは、私達の知らない歴史よ」







…何言ってんだ?





ふと、タイムスリップする前に理科の授業…ほとんどタイムスリップの話だったけれども、定年教師の話を思い出した





"時空の歪みによって周りとは違う環境に見える"






もしかしたら、あの桜の木は………時空の歪みによるものだったのか?





それだったらあの日、初夏の季節に桜の木が咲いており、今俺がいる江戸時代の季節は春であるのが理由つく






いや、まあ俺まともに勉強してなかったから一体なにがこれからどーなるのかわからないけど…





「普通、幕末といったら大飢饉や世直し一揆…そして開国よね?でもここは…」





ハルは意を決したように、言った






「ここは開国後、そして戊辰戦争後の幕末じゃない幕末よ」







「だったら、何で新撰組が存在しているんだ…!?」






「それはわからないわ…開国っても、不平等条約を突きつけられず比較的世の中は安泰しているの」






「だけど、人々の意思は時代の軸が変わっても変わらないものなのよ。まだ完全な開国までいってないから攘夷派、保守派の対立はまだあるの。そして私達がいる今、ここはその対立の代表的で大きな争い…戊辰戦争後なのよ」







わけわからん…とうに俺の脳内はハルの難しい説明でパンクしていた




戊辰戦争で荒れてしまった土地は今の有能な指導者のおかげで草木が生え豊かになり、飢饉のきの言葉を思いつかせないような米の納品率が急上昇しているそうな








「とりあえず、俺たちがタイムスリップしてきたせいで歴史が変わった。で合ってるか?」






ハルはコクンッと頷いた





「つまり、俺たちは今安泰の世…平和な世の中にいるのか」





俺はどこかほっとした



てことは…




「新撰組のみんなは死なずに済むってことか!?」




思わず声を荒げてしまい、ハルをビックリさせてしまった



「ええ、そうよ。今も禁教があるけれどオランダと中国に行くぐらいなら許されるぐらいになったの」




「そうか…」




土方さんや沖田さん、誰も死なないんだ




俺は改めて安心し、体の力が抜けた