「くっそ…てめーら…!!!」
怒り震えながら男は立ち上がり、こちらへと刀を構えた
ま、まじかよ
カタカタカタッと手が震え、柄を掴む手に汗がにじむ
沖田さんはふっと笑い
「昼間のあの威勢はどこいったんです?」
「あ、あれは…!何も考えてなくて…」
俺は、俺は…!
男が今でも突進してくる勢いだ
このままだと俺と沖田さんは串刺しに…
「あんたからしたら、僕達は人殺しなのかもしれない」
沖田さんは夜空を見上げ、続けた
「斬らなければ、自分かもしくは誰かが斬られる」
「うおおおおおおお!!!!」
男が俺と沖田さんに向かって猛突進してきた
「沖田さん!」
そんな俺の呼びかけを無視して突っ立ったままの沖田さん
「忘れないでくれ、理由もなく僕達は刀を取った覚えはないんだ」
一言、一言が俺の心に目に耳に入ってくる
「死ねえええええ!!!!!」
男との距離が、あと数メートル
「"守るため"に僕達は斬る、それが運命だから…」
男の猪のような足音が近くなってくる
「だから、裕斗」
「クソ餓鬼ども!!!!」
男は、刀を振り上げる
「"僕を守るためにその刀を抜いてください"」
ガキンッッッッ!
振り落とされた金属とそれを受け止める金属の音が、市中に響く
俺は、命を奪うことに…言い訳ばかり考えていたのかもしれない
「…なっ!?」
"守らなければ…!"
はじき返し、男の懐へともぐる
「す、すばやっ」
躊躇なく俺は思いっきり刀を横に振った________________
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……………
「やれば、できるじゃないですか」
沖田さんは放心状態の俺に近寄り、肩に手を置いた
俺の横には、先程まで動いていた男が倒れている
「沖田さん、俺は…」
許されないことをしてしまった
命を、奪った
「あんたが僕を守った。それだけですよ」
「裕斗!総司!」
前から、男の人…土方さんが走ってくるのが見えた
「一体どこ行ってたんだ…」
「それはこっちが言いたいですよ土方さんー、僕より張り切ってたくせに遅かったですよ」
るせえ!と言いながら歩く足を止めた
俺の横に倒れている男に気づいたのだ
「…お前がやったのか?」
土方さんの問いに、こくんっと頷くことしかできなかった

