江戸の虎が溺愛する者




………いや、落ち着けよ俺









「行きませんからね?行くなら一人で行ってください」










「付き合いが悪いなー…なんだ、女でもいるのか?」









高杉さんの形の良い唇の両端が上に上がる










この人、俺を弄んで楽しむつもりだな?











「いませんよ」










思い通りにされてたまるかっ











「あんなに髪飾りで悩んでいたのにか?」











高杉さんの衝撃なその言葉に、俺の強気な態度は崩れた








「…な、なんでそれを?」












まさか、キスされたのも見られてたとか…?











高杉さんは右手の人差し指で自分の頰を指した










「口付けされて、裏路地まで走り逃げた所まで見たぞ?」











「うわああああああああ」











頭を抱え込み、その場にしゃがむ











見られてた!思いっきり恥ずかしいところを見られてた!











これはもう平岡だけじゃなくて高杉さんも…











「…ストーカーだ」











「すとーかー?」










不機嫌な顔で聞き慣れない現代語に首をかしげる











人を追っかける気質がある人だなんて言えない、口が裂けても言えない