江戸の虎が溺愛する者






「くそ…もう何なんだよ、あの人!」









人目のない路地裏に走り込み、先程のキスされた頰を痛いぐらい擦る











女に手出しできないことを知っててからかったのか?












もう嫌だよ俺!メンタルブレイクしそう!












うわああああ…と落胆していると、背後から微かに足音が近寄って来るのを感じる











「…やれやれ、モテるのはつらいや」













市中を歩いている時も、かなり不自然な距離をあけながら俺の後ろに歩いているやつがいた












俺が髪飾りの売っている店の方へ行ったら着いてきて、怪しまれないように別のお店の方へ行ったのだろう












ただ、それだけではあまりにも根拠がなかった












しかし、絡んできた女が去って俺は路地裏へ走り込んだら慌てて追いかけてきやがった












これは完璧なストーカーだろ












俺はゆっくり歩き出す










すると、ストーカーも歩調がゆっくりになる











女では…ないな










攘夷志士か?











頭を掻く










…こいつ1人だけじゃなかったらどうしようかな












俺はストーカーと交戦になったとしよう











ここは路地裏、挟み撃ちで敵の援軍がやってきたら絶体絶命だ











逃げ道なんてありゃしない












それだったら…










人の多い市中へ行った方が交戦は避けられる!











来た道へ戻ろう、ストーカーはまあ…タックルで何とか!











俺は大きく後ろへ振り向いた