江戸の虎が溺愛する者





「いや、遠慮しとく」







ろくなこと無さそうだ…











何とか腕を解放し目の前に女性の肩を軽く押す











「んまあ!気分屋なお侍さんなのね」










すると女性は俺の腕を軽く払いのけたかと思えば、俺の胸板へとべったりくっついた










「…っお、おい」










冗談じゃねーぞ、もう周りからの目線が痛いんですけど!








いや、気にしない。気にしたら負けだ、耐えろ俺!










あたふたしている俺の様子が面白いのか、女性は微笑む










何と言い表せばいいのかわからないほど、色気のある妖しいものだった









…もう俺、女の人に振り回されすぎじゃない?そろそろやーなっちゃうよ?泣くよ?










心の中で大きく落胆する











「今度会った時は…お誘いに乗ってくださいね、虎吉様?」










華やかな水色の振袖の襟から大きく開かれた胸元が見え、それは着物越しに俺の肌に圧力がかかった









「あの、俺で遊ぶのやめてもらえます?一応男なんで」











うん、健全な男の子だよ俺は









「ふふっ可愛らしいお侍さんなのね…では、また」








すると、頰に何か柔らかいものがあたった









気がつくと女性の顔がすぐ視界の横にあったと思えば離れ、そのまま人混みの中へと消えていった










な、なんだったんだ…








俺は先程柔らかいものがあたった方の頰を触ると、指には赤いものが付いていた







それは血ではなく、口紅のようなもので______









「キス、されちまった」









しかも見知らぬ人に











そう思うと居ても立っても居られないほど恥ずかしさが込み上げ、身体中の水分が沸騰するようだった










こ、こんな恥ずかしいの人に見せれるか!!!!







俺は頰を拭い、慌ててその場から去った