俺は知らんぷりしてこぼしたお茶を拭く
すると、障子が静かに開いた
「お団子…持ってきました」
声の主は、前までの俺の想い人
「ご苦労、ハル」
ハルは嬉しそうに笑い、風呂敷から団子が入っている箱を取り出した
そして、座っている俺らの中心にそれを置く
「僕らも食べていいんですか?」
沖田さんは首を傾げ、土方さんに問う
「ああ。折角だ、みんなで食うぞ」
ふっ太っ腹…!
土方さんの懐の大きさに感動する
「じゃあ食べていいんですねい。いただきまーす」
沖田さんは早速一本の串団子を食べ始めた
俺も手に取り、食べる
団子特有のもちもち感が俺の頰を垂らす
団子って本当に美味しい
「では、私はここで…」
「待て」
ハルがその場を去ろうとした時、土方さんが呼び止めた
「…ありがとう、て店長に伝えておいてくれ」
ふっと目を伏せた土方さん
この人はわかりやすいほど顔にでる
素直にありがとう、て言えばいいものの…わざと"店長"と付け加えた
だってお団子を作っているのは………
「…っはい!わかりました!」
ハルは少し頰を染め、眩しいほどの笑顔で返事をし部屋から出て行った
「土方さーん、お団子を作っているのはあの子じゃないですかー」
そう沖田さんは言い、持っていた串に刺さっていた団子を全て食べきる
「るせっ」
…ほんっとうに素直じゃない人だ
俺は苦笑し、もう一本の串団子を手に取る
ハルが来てからずっとだんまりしていた俺を気にせず、沖田さんと土方さんはまたお約束の口喧嘩が展開し始める
俺は一度もハルの方を見なかった
そしてハルも俺のことを見ずに立ち去った
障子の隙間から見える青空は澄み切っている
…前みたいな関係に戻れないのと同時に
胸につっかかる、苦しいものを覚えた

