「何で…俺、雪に酷いことをしたんだぞ?なのに怒らないのか?」
ハルもそうだった
好きでもない俺の一方的な愛情を我慢して受け止めた
土方さんと結ばれるまで…大切な人を辛い思いをさせてしまったんだ
「……雪を、傷付けたくなかった」
また、同じことを繰り返してしまった
雨は容赦なく俺を冷たく濡らした
「私は、傷ついてなんかいません」
えっ?
俺はビックリして顔を上げると、そこには怒っている雪の表情があった
「酷いこととか言わないでください!虎吉様が私を助けてくれるために考えてくれたのはわかってますし、何よりも、その………」
雪は引いた顔の赤みをまた呼び戻した
「私は、その、虎吉様のことが好き…なので口付けのこと、ひ、酷いとか思ってません…!」
強くそう言い切った雪に嘘なんて言葉はこれっぽっちも感じさせなかった
俺、この優しさになら甘えていいのか…?
雨はすでに顔を濡らしていたが、頰には温かい雫が伝った
それは雨と混じり、顎へと下ってく
それと同時に心がじゅんわりと溶けていくのを感じて…
俺はフッと笑う
そうか、俺は__________________
「その言葉、忘れたらダメな」
俺の両頬に添えられた手を握り、優しく雪に触れるだけのキスを落とした
先ほどとは違う、優しいキス
俺たちは雨に打たれて冷たいはずなのに、服の上から感じる温度はとても温かかった