江戸の虎が溺愛する者







すると男は玄関の前で屈(かが)む











…まさか、そこでトイレするとかそんな嫌がらせじゃないだろうな?












内心呆れながら見ていると、そんなアホな想像は掻き消された












男は懐から白い紙…………文を取り出したのだ












「っ!あいつか…」











2度目の現行を目にした俺は、男に話を聞こうと角から出ようとしたその瞬間












ガラッ












えっ…………?












玄関から、雪が出てきたのだ












しかも、男が手紙を置いている最中に












俺はタイミングを失い、再び身体を引っ込める













「くそっタイミング悪すぎだろ!」












俺は男の行動に注意を払う












「えっ…?」











雪は事態を理解していないようで、ビックリした様子で固まったままだ












男もそれなりに驚いたような様子だったが、表情が歓喜のものに変わっていく












「雪ちゃん…!わざわざ僕に会いに来てくれたの?」











男は立ち上がり、雪の両手に手重ねて包み込む












「…!文を送り続けていたのはあなたなんですか?」












雪は顔に警戒の色を出す












「そうだよ!やっと僕の気持ちに気付いてくれたんだね嬉しいよ!!!」











男は雪の怒りなんて無視し、ベラベラと言葉を述べる











何言ってんだあの男は!











現代のアイドルの追っかけみたいなやつだな












どうやら男は雪と両想いだと勘違いしているらしい













「な、何を言っているんですか!?離して!」















雪が手を振りほどこうとし、身をよじろぐ















「駄目だよ雪ちゃん、僕と一緒に…」














男の声からはもはや狂気が含まれていた














無理やり引っ張られる雪は涙目になり、抗う















「嫌あ!虎吉様…!」