「好きな女の幸せを奪ってどうするんですか」
言い訳だってわかってる
奪う勇気は、俺にはない
「誰が幸せだと決めつけたんですか…男ならがっつりいってください」
…この時代の男の人って恋愛事情になるとこう、説教混じりになるのか?
「長年、ずっと片想いだったんでわかるんですよ…運命の相手とかそういうのが」
さすがに沖田さんは口出してこなかった
「確かに俺が幸せにしてあげればいいのかもしれませんしかし、俺が選んでも選ばれなければ意味が無いんです」
俺は再び、どこまでも続く曇天を長い前髪の間から見上げた
どこまでも理不尽だよな、この世界は
沖田さんは2回目の盛大な溜息をついた
「…あんたはどこまでも甘ちゃんですね」
周りから聞いたら皮肉かもしれないが、俺に取っては遠回しの慰めだと感じた
それがこの人の優しさだからだ

