江戸の虎が溺愛する者






俺は自分の両手を見つめる










「背負うものがあれば、強くなれる…か」










俺に誇りと名誉があるのだろうか











「よーい…始め!」










審判の掛け声で試合開始の合図が下される











それと同時に竹刀がぶつかり合う








攻防が繰り広げられる中、俺は子供達に視線を向ける









時空の歪みのせいで歴史が変わってしまったから、このあとに起こることが俺の知っているものとは限らない









戊辰戦争後の江戸時代…だいぶ捻くれたものだよな









もし刀を抜く場合の時、この子たちは誰と戦うんだろう?








「何ボーッとしているんですか?」









すると、師範の次は沖田さんが俺の隣に座った









「先のことを考えていました」










「未来のこと、ですかい?」









「あの子達が刀で人を傷つける必要がない…そんな時代のことです」











俺は目を瞑る












瞼の裏には、俺が生まれた平和な世界が鮮やかに描かれた











「………。」










沖田さんは俺が喋るまで口を開かず、黙ったままだった











「時空の歪みのせいで、俺の知っている平和な世の中が遠のいてしまった…そんな気がして」










呼吸するのと同じように、当たり前にやってくるはずだった確かなものが崩れ去ってしまった













「平和は自分達の手で掴み取って、実現させるものですよ虎吉。勝手に歩いてやってくるものではありません」












フッと微笑んだ沖田さんの笑みは嘘偽りのないもののような気がした













先ほど、子供達に向けたそのものだった