江戸の虎が溺愛する者





まだ昼ごろだしな…何しようかな〜







背中にひっついている沖田さんを無視して、んーっと悩んでいた矢先、視界の隅で何かがキラリッと光った








「ん?」









そこへ視線を向けると、長屋と長屋の間の裏道に男が立っていた







影で顔が隠れていて、はっきり認識することはできない








あの男が持っている物って……









「虎吉様!」







その声だけが、透き通って俺の耳にすんなりと入ってきた








「雪…!」








俺は声の主を探し、見つける








肩まで伸びたストレートヘア、触れたら壊れてしまいそうな小さい顔、全てを見通すような優しい瞳、その名にピッタリなほど肌が透き通るほど真っ白で…よく、黄色の着物が似合う女の子が俺に微笑んだ





思わず駆け寄りたい衝動がきたが、グッと堪えた







ここで雪の方へ向かってしまったら、あらぬ誤解を招きそうだ…







そして新撰組と敵対する組織に目をつけられたら困る






俺は"もしものことを考え"、今雪の方へ行くのを我慢した代わりに、俺も雪に向かって微笑み返した





すると、後ろからにゅっと顔を出した沖田さんが







「…行かなくていいんですかい?あの子の元へ」





俺は頷く








「ええ。俺達も屯所に戻りますか」






そう言うと沖田さんは俺を解放し、隣に並んで歩き始める









「賢くなりましたね、虎吉」








いつもの愛想笑いが俺の視界を独占する







…これは、俺の考えを読み取られたっていうことでいいのかな?







一旦雪のことは頭から離し、この後の時間をどう過ごすか考えた








ふと、先ほどの裏道を見ると男はいなかった







「あの人…」







もし、見違えじゃなかったら







男が手に持っていたのは懐中時計のような気がした