気が付いたら周りには俺と雪、女将さんにもう1人の男の来客だけしかいなかった
もうそんな時間か…
「…ふふっ」
「な、何笑ってるんだよ…」
ずっとそばに居たハルが急に優しく笑い出す
変な子だよなー、雪って
「虎吉様の表情が明るくなったのが、嬉しくて」
そんなあからさまだったか俺!?
「俺の顔を見て笑う雪の方が面白い顔をしてるぞ」
「ええっ!?」
ビックリした雪の表情は、演技とか嘘とか…そんな言葉をチラつかせない
見てて飽きねーな…
思わず、力が抜けてしまい腹から笑いがこみ上げてくる
「ちょっ虎吉様!?何を笑っているんですか!」
すると、少し不貞腐れた表情になる雪
コロコロと変わる表情は惹き寄せられる
たった失恋しただけで、人の心は優しい何かに惹き寄せられやすいものなんだな
「あー、悪かったって。雪の表情、見てて飽きねーなって」
「えっ…?」
すると不貞腐れ顔の筋肉は緩み、豆鉄砲でも食らったような何ともおかしな表情になる
頰はみるみる赤く染まっていき、俺もなぜかつられてしまい赤くなった
「何、赤くなってんだよ…」
慌てて顔をプイッと背けたが、手遅れだったかもしれない
顔が熱く感じるのは嫌でもわかった
「…虎吉様のばか」
ボソっと言った言葉を俺の耳は逃さなかった
「なーんーかー言ったかー???」
俺は少しムキになって立ち上がり、頭一個分の身長差を利用して雪の赤く染まった両頬をつねる
「んひ〜〜〜、ごめんなひゃい〜〜」
「ははは!お前この顔似合ってるぞ」
俺はこれ以上笑いを抑えることができなかった
両頬を解放された雪はムッとした顔になり

