男は手紙を玄関前に置き、どこかへ走り去ってしまった
すると、店から出て来た雪が手紙に気付き顔を青ざめる
恐る恐る手紙を拾う雪の姿は悲しかった
「あの子が雪…という子ですかい?この前の人売りに捕まっていた子じゃないですか」
「雪…」
俺は家屋の角から出て、歩み寄った
「虎吉…様?」
見上げた雪の目の縁には涙が溜まっていた
「お前が店を出てくる直前、ある男が手紙を置いて行ったんだ」
そうなんですね、と雪が消え入りそうな声で言う
この様子じゃ、女将さんは知らないだろうな…
「だいぶしつこそうですね、その男」
沖田さんが後からついて来て、愚痴を放つ
「……怖い」
握られた手紙はクシャクシャになり、雪の肩は震えていた
どうしたら…
どうしたら今、この子の不安を取り除けるのだろうか?
ハルの時みたいに、触れることはできない…
この子は、ハルではない
なのにどうしてこんなに弱々しい女が気になる?
俺は雪の頭に手を置き、優しく撫でた
「俺が、何とかする。…約束だ」
俺は微笑み、手を止めなかった
口だけで終わらせるつもりはない
沖田さんはフーッと息を吐く
「…じゃあ、毎晩見廻りに来るんですかい?僕は眠たくて眠たくて死にそうです」
「ただサボりたいだけですよねそれ!?」
雪は安心したのか、ホッとした表情になる
「虎吉、様…守ってくださいね?」
雪のおでこが俺の胸板に寄りかかる
…タイムスリップした日の夜、盗賊に襲われたことを思い出すな〜
あの時も沖田さんに守るために〜どーのーこーの言われたっけな
「ああ、必ず」
春の風が、夜闇を優しく包み込んだ…

