教室の窓から覗く青空は澄んでいるように見え、童話に出てくる…塔のお城で閉じ込められていたお姫様が見ていたであろう景色は何百年時が経とうが変わらない
「お前ら、タイムスリップを知っているか?」
というわけで理科の授業中、先生が授業とは関係ない話をし始め、興味関心がない俺は話を聞かずに窓の外を眺めていた
あー、早く昼休みにならねーかな
「映画や漫画では現在から未来、現在から過去へと時空を遡るという題材のものが多いが…」
定年に近いこの先生は、生徒のみならず他の教員からも距離を置かれるほど一度関心持ったら納得いくまで研究し続けるという熱心なおじさんだ
話が非現実なことが多く、今話している"タイムスリップ"だって今回が初めてなわけではない
「時間の粒子に乱れがあると過去、現在、未来へと繋がる一本の道が生まれ…」
ポンッ
突然、机の上にクシャクシャに丸められた紙切れが横から飛んできた
"今日もあの先生、熱心だね"
こんなに丸くて可愛い字を書くのはたった1人しかいない
隣の席にいる、俺の幼馴染み…ハル
幼稚園の頃からずっと一緒で、短かった髪が背中までのびたハルは大人びた女の子に成長していた
"そうだな。早く昼休みが来てほしい"
俺はこう書き折りたたんでハルの机の上に置く
「但し、タイムスリップするときに発生する時空の歪みのせいで過去の歴史が混乱する説が浮上した。例えば…新撰組の本拠地は京都だが時空の歪みで江戸や土佐になるなど」
根拠のない話を聞かされている他のクラスメイトはきっと眠たいに違いない
休みなく長々と話し続けている様子だと、手紙交換しているのバレてなさそうだな…
俺はふぅっと一息をつく
「なお、時空の歪みができる時が一目でわかる。それは時空の歪みが出現している場所だけ明らかに周りとは違う環境にあるような様子がある時で………」
横を見ると、ハルの横顔が綺麗に俺の目に映し出される
ああ、本当に…
自分の胸が高鳴るのを感じる
そう、この気持ちは小さい頃からずっと………
「くれぐれも雨と雷が伴う日は気をつけたまえ」
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部活終わり後…夕焼けが体育館を照らす中、バスケットボールが弾む音が響いた
「96…97…98…」
シュートを決めるたびに数えられる本数
綺麗な弧を描きゴールへ吸い込まれるような感覚
こんな気持ちが良いことなんてない
「99………100!お疲れ様です裕斗先輩!」
1つ下のマネージャー、杉原 沙由里がドリンクを渡してきた
美味しい冷たい水はかわいた俺の喉を潤した
「悪いな。居残り練に付きあわせちまって」
すると杉原が頭を激しく横に振り、彼女の腰まである長い髪が荒れた
「そんな…!練習のお手伝いできて嬉しいです!」
俺は微笑み、部室へ戻って帰る支度をした