「温子です。」







「あったかい子で、あつこ。
それがお母さんの名前です。」





僕がそう言うと
校長先生は笑った。


「そうかい。そうかい。」


 

目を閉じたまま
校長先生の皺くちゃになった頬に涙が伝うのが見えた。









僕は
葬儀で泣かないと決めていたし

感情なんか失っていたけど


校長先生の丸くなった腰と
涙をみたら

僕まで泣いてしまった。