時はどんどん過ぎて、もう梅雨の季節。
河川敷の屋根のあるところで、私たちは会うようになった。
「ギター大丈夫?」
「うん。ちゃんと雨からは守ってきてっから平気」
雨の日は、確かにギターは濡れていないが恭介がびしょびしょになっている。
持ってきたタオルを出して、恭介の頬に当てた。
「ギターだけじゃなくて自分のことも守らなきゃ、風邪ひくよ」
そう言いながら頬や首を拭いていると、大変なことに気がついた。
今、めちゃくちゃ距離近い。
恭介の顔を見上げてみると、パチンと目が合った。
心臓が高鳴る。
目を見ていられない。
「…っと、ご、ごめん」
ぱっと離れてタオルだけを差し出した。
「…ん、ありがとう」
恭介もどことなく顔が赤いように見えた。
ドキドキが止まらない。
「わ、私今日は帰るね!また明日!」
「えっ…おい!」
恭介が引き止めるのも聞かずに、走り去った。
こんな感情、知らない。
「もしかしてこれって…」
心当たりのある感情の名前が頭に浮かぶ。
「…恋…?」
綺麗な声をした、綺麗な心を持った、あの人に、
きっと私は最初から惹かれていたんだろう。
恭介への恋心を、自覚してしまった。
