「柳さん! ゴチソウサマっす!」
「ちょっと駆、遠慮ってものを知らないの?」
すかさずお礼を言う駆と、駆にツッコむ私。芸人さながらの鋭さかもしれない。
「だって、旅館のご飯が食べられるなんてめったにないぜ。俺、楽しみで今からよだれでそう」
普通ここは遠慮して断るところじゃないのかな。そう思ったけど、子供みたいにご飯を楽しみにしている駆と、その様子を微笑ましく眺めている柳さんを見たら何も言えなかった。
「では、お言葉に甘えて……ごちそうになります」
「いえいえ。……では、そろそろ行きましょうか」
「はい! で若女将、行ってきますね」
三人で自転車に跨りペダルを踏み始める。ゆっくりと進みながら若女将に手を振った。



