途中で話すのをやめた私は、自転車に乗って敷地を飛び出した。
「おい、ちょっと待てって」
駆の自転車の音が聞こえる。なぜか諦めずについてきているようだ。今日の駆は少しおかしい。こんな無茶なことを言うのは初めてだし、最近は土日に会うこともなかった。
それなのにどうして今日に限ってこんなことをするのだろう。
家から旅館は自転車で数分もかからない距離だ。そのため、私は駆を巻くことが出来ないまま旅館に到着してしまった。
私はバイトの時と同じように裏口に自転車を停める。駆も私に続いて停める。
「お前、スカート短くないか? 自転車には乗らない方がいいって」
「……今日の駆、なんだかお父さんみたい」
「えっ?」
「私は中に入るけど、一緒に行きますか? お父さん」



