「そうかしら。陽咲ちゃんを可愛いって思っているから、案内をお願いしたのかもしれないわよ」
「ええっ。ほたるならともかく私はないですよー。今まで男の子にモテたこともないですもん。それにほら、彼は来週には東京に戻ってしまいますし」
「……そう、その方は東京から来られたのね。確かに東京は、遠いわよね」
「そうなんですよ。あと、私はやっぱり……ほたるが目を覚ますまでは新しい知り合いを増やさないって決めているんです。今回は約束しちゃって、矛盾しているんですけど……この一度きりです」
無機質な部屋。暗くて重い雰囲気。さっきまで楽しそうに話していた女将も、私のせいでまた悲しい表情に逆戻りだ。



