「せっかくの旅館飯なのに、味がよく分からないッス」
駆は、ご飯を食べながら泣いていた。泣いているのに、口元は笑っている。
「駆、泣くかご飯食べるかのどちらかにしなよ」
「うるせーな、泣いてないっつーの」
「そうですね、男は泣いていても泣いていないって言い張る生き物ですよね」
「……男の人って、意地っ張りなんですね」
少しずつ、空気が軽くなる。悲しい事があっても、冗談を言ってご飯を食べることが出来るなんて、人間は不思議な生き物だ。でも、そういう生き物だからこそ、人は挫折を乗り越えていけるのかもしれない。
「そういえば、お二人はこのネックレスの石の名前、ご存じですよね?」



