「失礼します。本日の前菜とお刺身をお持ちしました」
「はい、ありがとうございます」
仲居さん達はテーブルの上にてきぱきと料理を運ぶ。私は、泣き顔を見られないように出来るだけ下を向いていた。駆も同じように俯いている。
すでにこの時点で、私たちに何かあったのは一目瞭然だ。彼女たちも気づいていたと思うけど、何も聞かずにこの場から離れて行った。
「二人とも、たくさん泣いて疲れたでしょう? そういう時は、美味しい物を食べるに限ります。さあさあ、食べてください」
柳さんは、私たちに箸を渡し、早く食べろと促してくる。
本当に、柳さんは強引なところがある。そういうところが面白くて、自然と笑みがこぼれる。
悲しくて仕方がないのに、なんで笑えるんだろう。



