ー放課後、私が下駄箱に行くと、下駄箱を背に、寄りかかる蒼大先輩がいた。


蒼大先輩は、考え事をしているのか、目を閉じている。



「蒼大先ぱ……っ」



近づこうとして、私は足を止める。


名前を呼んだ私の声は、どんどん小さくなって、消えた。


蒼大先輩の傍に行って、私は何を言えばいいんだろう。


悲しみに暮れる先輩に、何が出来るのか……。


つい、怖気づいて俯く私に、「静月」と、蒼大先輩が名前を呼んだ。


顔を上げると、軽く手を上げて微笑む先輩と目が合う。


「蒼大先輩、どうしてここに……?」


「送る。また、横断歩道で体が動かなくなったりしたら、危ないからな」


「あ………」


蒼大先輩、私の為に待ってくれてたんだ……。


先輩だって、苦しくて、悲しくてたまらないはずなのに……こんな時にも、私の事を心配してくれてる。


蒼大先輩は、やっぱり強い人だ……。