『君が覚えててくれ、その記憶の中に、君だけは…』
そう、そこまでが、私と彼との7、8分の会話。
最初で最後の逢瀬。
「名前も知らない相手だったのに、源先輩は私に、銀のイヤーカフを渡したんです」
私はポッケから銀のイヤーカフを取り出して、手のひらに乗せ、蒼大先輩に見せた。
すると、蒼大先輩が息を呑んだのが分かった。
「それは……俺と源がペアで買った、イヤーカフだ」
蒼大先輩は、私の手のひらにある銀のイヤーカフに、人差し指でそっと触れた。
「やっぱり、お揃いだったんですね」
「あぁ、源と出会って初めて遊びに行った時に買った。それを、源は何で静月に……」
「………分からない。だけど、このイヤーカフにある源さんの記憶を見てみたら、何か分かるかもしれないです」
「そうか!!静月、頼めるか!?」
懇願する蒼大先輩に、私は頷く。
そして、源先輩のイヤーカフを両手で握りしめて、ゆっくりと瞳を閉じた。


