「私には……っ、何も無いっ……。あるのは、この気味の悪い力だけっ……」
ジワリと、涙が滲んで、青空が歪んで見えた。
それは、まるで青空の海に落ちた雫のように、波紋が起きたかのような錯覚。
「あぁ……ここにいても、空が遠い……」
私は、青空に右手を伸ばした。
ーこの短い手がもっと長かったら、あの空へと届いた?
ーこの背に翼があったら、あの空へと飛んでいけたのかな?
『あの空の向こうには、俺たちには想像も出来ない、楽園が広がっているらしいんだ』
あの時、源先輩の言っていた言葉を思い出す。
あの青空の向こうには、あなたの言う楽園があるのかな。
なら、源先輩はもうそこへは行けましたか?


