『お母さん、今日は男の人に会わないの?』
『し、静月?何を言ってるの?』
それは、お母さんが私の髪を結んでいた時の出来事。
お母さんの手が、私の髪に触れた瞬間、知らない男の人とべったりくっついているお母さんの姿が見えた。
そう、それはお母さんの浮気に関する記憶。
私は幼い故の愚かさで、正直にそう尋ねた。
『男だと、どういう事だ!!』
『違うのよ、違うのよあなたっ!!』
そこからは、早かった。
ガラガラと塔が崩れ落ちていくような、家族の崩壊。
私の余計な一言が、家族を壊した。
『あなたのせいよ……この、化け物!!』
『お姉ちゃんは……疫病神だよ』
冷たい瞳……私への憎しみを、肌で感じた。
感情が読めるからなおさら、2人の憎しみを受けて、私は心底この力が嫌いになった。